スペインバスク地方で造られるワイン

皆さま、スペインという国はご存じですよね。
日本からみると西の西の果て、漢字で書くと西班牙です。イメージとしては闘牛やフラメンコ、パエリアなどでしょうか。
ですが、今回わたしがここでご紹介したいのは「チャコリ」というワイン。スペインワインにはいろいろなテイスト、種類がありますが、それはのちほどご紹介していくとして……。
「チャコリ」は、スペインはバスク地方で生産されるワインで、新鮮な造りたてのものをいただく、いわゆる「新酒」っぽい雰囲気のワインです。
イベリア半島北東部、大西洋側に位置するスペインとフランスにまたがるように位置するバスク地方は、今や世界有数の美食の街として知られていますが、そのスペイン側のバスクでで造られ、日常的に飲まれているワインが「チャコリ」です。
美味しいものが大好きな人は一度は行ったことのある、または行ってみたいと思うバスク地方。そのスペイン側のフランス国境に近い街が、サン・セバスチャン。旧市街のバルへ行くと、カウンター越しにカマレロ(ウェイター)がチャコリを笑顔で注いでくれます。小さな円柱型のグラスを目がけて腕をめいいっぱい上へ伸ばし、頭上からジョジョジョーッと勢いよく注いでくれるパフォーマンスが印象的! これをエスカンシアールといいます。
わたしも、初めて見たときは、もう1回!! もう1回!! とお願いしちゃいました。
ほんのり発泡していてクリスピーな口当たり、青リンゴのようなフレッシュで爽やかな酸味とミネラル感が特徴です。味わって飲むというより、ビール感覚でグビグビッと飲む感じ。
高い位置から注ぐのには理由があります。かつての「チャコリ」は、現在のものより酸が高く酸っぱかったので、上からグラスに液体をぶつけることによりワインに空気が含まれ、酸味が穏やかになり飲みやすくなるとされていました。また、勢いよく注ぐことで、気泡がより立ち、口当たりがよくなるともいわれています。今ではパフォーマンス的な要素が大きくなりましたが、特徴的な注ぎ方がカマレロの習慣になっていったのですね。
生産者のなかには、味が壊れるのでエスカンシアはしないで、脚のあるワイングラスに静かに注いで飲んで欲しいといわれる方もいますし、チャコリの生産地についてはまた後述しますが、ビスカイア産のエリアであるビルバオ周辺のバルでは、エスカンシアはしません。
ともかく、観光客だけでなく地元のおじさまも買い物途中のマダムも、お気に入りのピンチョスを片手に気軽に飲んでいる地元のワインが「チャコリ」です。
チャコリの生産地

「チャコリ」として認定されている生産地には3つのエリアがあり、同じ葡萄品種主体で造られていてもなんとなくキャラクターが違うのです。
東部サン・セバスチャンのあたりで飲む「チャコリ」は、“チャコリ・デ・ゲタリア”と言います。わずかに気泡を含む爽やかでキレのある軽快なスタイルが特徴です。
ビルバオ国際空港があるあたりで造られる「チャコリ」は、“チャコリ・デ・ビスカイア”といいます。気泡はほぼなく、バルでもワイングラスで提供されます。ゲタリアのチャコリと比較すると、柑橘の香りと果実味、ボディー感がよりあるように感じます。
そしてバスクの州都ビトリアのあたりで造られる「チャコリ」は、“チャコリ・デ・アラバ”といいます。このエリアの生産者はとても少なく、現在わずか8軒。ビトリアでバル巡りをしたときにもアラバ産のものにはなかなかお目にかかれませんでした。気泡はなく、際立った強い香りや派手さもないのですが、落ち着いた酸味とミネラル感ある旨みがフードフレンドリーな印象です。
チャコリの葡萄品種
「チャコリ」に使用される葡萄の品種には、決まりがあります。ほかの葡萄品種ともブレンドされる場合もありますが、基本、白がオンダラビ・スリ(オンダリビ・スリ)です。
おまじないみたいな名前のバスク語ですが、国境のフランスバスクに近いところにオンダリビアという街があり、そちら由来の品種なのだと思われます。バスク語で「スリ」とは「白」。
一方、「ベルツァ」とは赤という意味で、赤ワインの「チャコリ」の主要赤品種はオンダラビ・ベルツァ。
さらに、産地によってプラスする推奨品種は少し異なり、チャコリ・デ・ビスカイアでは溌剌とした柑橘フレーヴァーのオンダラビ・スリ・セラティア(プティ・クリュブ)が推奨されています。その他、補助的に国際品種のリースリングやシャルドネ、ソーヴィニョン・ブラン、赤ではピノ・ノワールも使用認可品種ですが、パーセンテージの規制があります。
チャコリのスタイル
さてさて、さきほど「赤」の「チャコリ」と話しましたが、「チャコリ」はほとんどが白ですが、ロゼや赤の他、瓶内二次発酵のスパークリングワインや遅摘みの甘口、最近ではオレンジワイン、アンフォラ熟成タイプなどいろいろとあります。
味わいとしては、スタンダードタイプのものはフレッシュで軽快な口当たりの早飲みスタイルです。
ワンランク上のBerezia(ベレツィア)というシュールリータイプ(澱に5ヶ月以上漬け込んで旨みを引き出す)は、お食事を通してゆっくりと味わっていただけます。
瓶内二次発酵のAparduna(アパルドゥナ)の熟成したものは、シャンパーニュのようなイースト香や芳醇な旨みがあり、Apartak(アパルタ)とカテゴリーされているオレンジワインやアンフォラ熟成タイプは個性的で面白い。Uztagoiena(ウツタゴイエナ)と呼ばれるものは、遅摘みのレイトハーヴェストタイプの甘口デザートワインです。
「チャコリ」と一口にいってもさまざまですが、シーンに合わせて楽しんでいただけたらと思います。



